Science × Tech で医療を進化させる - 培養室の安全と信頼|培養室長 中野俊 インタビュー

PROFILE

培養室長・培養士
中野 俊

胚培養士としてのこれまでのキャリアを教えてください

新卒から大規模な生殖医療施設で胚培養士として経験を積み、採卵・検卵・体外受精&顕微授精・胚培養・凍結融解など、生殖補助医療における一連の業務に携わってきました。多くの症例を経験する中で、幅広い知識とどんな症例にも対応できる技術力を身につけてきました。

また、働きながら大学院へ進学し、生殖医療に関する研究にも取り組み、臨床だけでなく研究の視点からも生殖医療を学んできました。

さらに、国内だけでなく海外の学会でも合計30件以上の学会発表を行い、最新の知見や技術を積極的に学ぶとともに、自らの研究成果を発信してきました。学会活動を通じて得られた知識や経験を日々の臨床へ還元し、エビデンスに基づいた生殖医療の実践を大切にしています。

ORINAS ART CLINIC へ入職を決めた理由を教えてください

「つなぐ・つむぐ・つづく」という理念のもと、患者様一人ひとりの想いに寄り添いながら、最新のエビデンスに基づいた質の高い医療を追求する姿勢に魅力を感じました。

さらに、立ち上げメンバーとして培養室や新しい仕組みづくりに携われること、自分の経験を生かしてクリニックを一緒につくっていけることが入職の決め手になりました。

さらに院長はAIやデジタル技術への理解が深く、新しい発想で医療の質や安全性を向上させようという姿勢に魅力を感じました。

胚培養士として仕事をする上で、ご自身のこだわりやポリシーを教えてください

私が大切にしているのは、培養環境を整え、患者様一人ひとりに質の高い培養医療を提供することです。そのために、特に大切にしていることが2つあります。

1つ目は、胚培養士の技術と培養環境の維持です。教育する際は基本手技を繰り返し練習してもらい、「どのような操作でミスが起こりやすいか」「どうすれば防げるか」まで含めて教育しています。また、培養機器や培養液の品質管理、メディウムの選定、培養環境の維持など、培養室全体の品質を安定して保つことを大切にしています。

2つ目は、システムの力で培養業務を極限まで効率化し、胚培養士のストレスや負担を減らし、最も重要な培養業務や患者様への医療に集中できる環境をつくることです。

患者様の大切な卵子・精子・受精卵をお預かりする以上、安全性は何よりも優先されます。ヒューマンエラーは個人の注意力だけに頼るのではなく、AIを活用した業務支援システムの「音声で説明してくれる電子マニュアル」や「QRコード・ICタグを用いたWチェック支援システム」などを自ら開発し、安全性の向上と業務の標準化に取り組んでいます。

また、現場で感じた課題はそのままにせず、「困ったら改善する、なければつくる」という考えを大切にしています。この想いは培養室全体にも広がり、他のスタッフも自らAIを学びながら、物品管理システムの開発をはじめ、AIやシステムの力を活用した業務改善に積極的に取り組んでいます。

生殖医療は日々進歩しています。私自身も研究活動や学会発表を通して学び続け、新しい知見を積極的に臨床へ取り入れながら、より良い培養医療を提供できるよう努めています。

職場の雰囲気について

①実際に働いてみて感じた ORINAS ART CLINIC らしさを教えてください

入職前から温かいクリニックという印象を持っていましたが、実際に働いてみると、理念に共感したスタッフが集まり、職種を問わず患者様のために自然と協力し合える文化があることを実感しました。困ったときには気軽に相談でき、新しい挑戦も前向きに応援してくれる環境が、このクリニックらしさだと感じています。

また、院長はAIやデジタル技術にも精通しており、「Science × Tech」の考え方を大切にしながら、より安全で質の高い医療を目指しています。現場の課題に対しては、AIやデジタル技術を活用し、新しい仕組みづくりに取り組んでいます。こうした取り組みが、安全性や医療の質、患者様の利便性向上につながっており、不便なことや課題はテクノロジーで解決する姿勢が、このクリニックならではの魅力だと感じています。

②ORINAS ART CLINIC では、医師・胚培養士・看護師・事務スタッフなど、職種を越えてどのように連携していますか

患者様に安心して治療を受けていただくためには、職種を越えた連携が欠かせません。

当クリニックでは、朝礼と終礼でその日の注意事項や課題を共有するとともに、チャットツールや独自に開発したシステムを活用し、必要な情報を迅速に共有しています。必要なタイミングで確実に連携を取り、安全で質の高い医療を提供できる体制を整えています。

③ORINAS ART CLINIC には、どんな方が合うと思いますか

素直な気持ちで学び続けられる方や、安定して日々の業務に取り組める方は、このクリニックに合っていると思います。また、患者様のためにできることは何かを考え、チームで協力しながらより良い医療を目指せる方と一緒に働きたいです。

さらに、AIやデジタル技術などの新しい考え方も柔軟に受け入れ、「もっと安全に」「もっと効率よく」という視点で業務改善を楽しめる方には、とてもやりがいのある環境だと思います。

一方で、私たちが目指しているのは、質の高い医療と働きやすさを両立できる職場です。AIやシステムを活用して業務を効率化し、スタッフの負担を減らすことで、長く安心して働けるサステナブルな職場づくりを目指しています。ライフワークバランスも大切にしながら、仕事にも前向きに取り組める環境を整えていきたいと考えています。

転職を考えている培養士の方へのメッセージをお願いします

当院のラボはAIやデジタル技術を活用した業務改善にも積極的に取り組み、質の高い医療と働きやすさを両立できるサステナブルな培養室づくりを目指しています。

そして、私たちが目指す培養室に欠かせないのは、患者様からお預かりした大切な卵子・精子・胚を、一つひとつ丁寧に扱い、責任を持って向き合う姿勢です。 

一人でも多くの患者様の妊娠を心から喜べる方と一緒に働きたいと思っています。

さらに、臨床で得られた経験や疑問を研究へつなげ、その成果を患者様へ還元することを大切にしています。学会発表が初めての方でもしっかりサポートします。

より良い培養室を一緒につくっていける方と働けることを楽しみにしています。

職場での1日の流れを教えてください

(平日)

11:00~12:00 出勤。培養室を立ち上げて、タイムラプスを用いて受精卵や凍結可能胚の観察など

13:00 採卵・精液処理

15:30 体外受精&顕微授精

16:00 凍結融解胚移植 

17:00 休憩 

18:00 翌日準備・事務処理

20:00~21:00 帰宅

(土・日)

8:00~9:00 出勤。培養室を立ち上げて、タイムラプスで受精卵や凍結可能胚の観察など

10:00 採卵・精液処理

11:30 凍結融解胚移植 

12:00 休憩 

13:00 体外受精&顕微授精

15:00 翌日準備・事務処理

17:00~18:00 帰宅

Q&Aコーナー

Q:大学院での学びや学会活動での経験・知識が、現在の培養士業務に生かされていると感じる場面はありますか

A:大学院での学びや学会活動で得た知識は、現在の培養士業務にも生かされていると感じます。

学会や研究というと、新しい知識や技術を取り入れる場というイメージがありますが、実際には、現在行っている方法が本当に適切なのかを確認する場でもあります。例えば、培養液の比較検討など、さまざまな施設から発表される研究結果を見ることで、「今行っている方法で間違いない」と確証を得られることがあります。

一方で、新しい知識や技術も取り入れながら、現在の方法と組み合わせて、より良い成績につなげることもできます。こうした経験があるからこそ「この方法で間違いない」「この方法は避けるべき」という判断が明確になったと感じています。

また、学会では他施設の培養士の方と具体的な業務について意見交換する機会もあり、そうした交流から、より良い培養につながるヒントを得ることも多いです。

Q:クリニック立ち上げ期からのメンバーですが、大変だったことや印象に残っていることはありますか

A:クリニックの立ち上げでは、培養液や培養機器、作業フローまで、すべてをゼロから決める必要があり、選定にはかなり苦労しました。

一方で、これまでの経験から良いと感じていた培養液や試薬を取り入れたり、「もっとこうした方が良い」と考えていた方法を自分たちで実現できたりするのは、立ち上げならではの大きなメリットだったと思います。

決めることが多く大変ではありましたが、一つひとつ理想の形に近づいていき、最も効率が良く、卵にとってもより良いと思える作業フローを自分たちで作れたことには、大きな喜びがありました。

Q:新しい技術や仕組みに詳しくない方は、少し不安を感じるかもしれませんが、入職後に学んでいける環境もあるのでしょうか

A:もちろん大丈夫です。現在はAIを活用して、コードを書かなくても会話をしながらシステムを作れるようになっています。基本的に会話ができればAIともやり取りできるので、AIを使ったことがない方でも取り組みやすいと思います。

また、ラボだけでなく、クリニック全体として「こういうシステムが欲しい」「こう改善したい」といった相談ができ、AIに詳しい方からサポートを受けられる環境もあります。

「もっと効率化したい」「こんなことをやってみたい」という気持ちがあれば、入職後に学びながら新しい技術を取り入れていけると思います。