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最終更新日:
2026-01-13

この記事では、精液過多症の原因や妊娠への影響、精子の量や質を調べる方法について詳しく解説します。

精液過多症とは

精液過多症は、射精時の精液量が多い状態を指します。具体的には、1回の射精で出る精液量が6.3mLを超える状態と定義されています。この6.3mLという数値は、WHOラボマニュアル第6版における上限基準値(自然妊娠に成功した男性の上位5%にあたる値)に基づく参考値であり、厳密な医学的診断基準として定められているものではありません。また、精液量が多いこと自体が必ずしも問題となるわけではなく、他の精液検査の項目(精子濃度、運動率など)と総合的に評価することが重要です。

なお、WHOラボマニュアル第6版の精液検査のデータによると、自然妊娠に成功した男性の精液量は、その大半が約1.4〜6.3mLの範囲に収まることが報告されています1)。ただし、これはあくまで目安です。実際には、この基準値を下回っていても自然妊娠する場合もあれば、基準値を超えていても妊娠が難しいケースもあります。

精液過多症の原因

精液過多症の正確な原因は明らかにはなっていませんが、一部の研究では遺伝的な要因や副生殖腺の感染症が関係していることが示唆されています。

精液は精子と、精子を含む液体成分である精漿(せいしょう)で構成されています。精漿の約60〜70%は精嚢(せいのう)から、約20〜30%は前立腺から分泌され、残りは精巣上体や尿道球腺などから分泌されます。

感染症などによってこれらの器官に炎症が起きると、精液の分泌量や成分のバランスに異常が起こる可能性が考えられます。

精液過多症が妊娠に与える影響

精液過多症が男性の妊娠力(妊孕性:にんようせい)に与える影響については、まだ十分に解明されていません。

理論的には、精液量の増加により精子の濃度が薄まると、性交時に女性の生殖管に到達できる精子の総数が減少する可能性が考えられます。ただし、精液量が多くても精子濃度が正常であれば、総精子数は十分に確保されるため、必ずしも妊娠に不利とは限りません。

実際、精液過多症では精子の動きや形には異常がみられないケースも多く、精子の質そのものは正常であることがほとんどです。

もし不安がある場合は、精液の量や質を調べる検査を受けてみるのも選択肢のひとつです。

精液の量や質を調べる方法

精液の量や質を調べるための方法として「精液検査」があります。現在の精子の状態を客観的に把握でき、男性の妊娠する力を知るうえで重要な検査です。

精子の状態は体調やストレスなどの影響を受けやすく、数値も変動することがあります。そのため、1回の検査結果だけで判断せず、必要に応じて複数回検査を受けることでより正確に傾向を把握できます。

精液検査では、採取した精液を分析し、精子の数や動き、形などを詳しく調べます。検査結果は、WHO(世界保健機関)で定められた以下の下限基準値をもとに評価されます。

<精液検査の下限基準値(WHOラボマニュアル第6版)1)

検査項目 解説 下限基準値
精液量 1回の射精で排出される量 1.4mL以上
総精子数 1回の射精に含まれる精子の総数 3,900万/射精以上
精子濃度 1mLあたりに含まれる精子の数 1,600万/mL以上
前進運動率 前に進む動きをしている精子の割合 30%以上
総運動率 動いている精子全体の割合 42%以上
正常精子形態率 正常な形をした精子の割合 4%以上

これらの基準値は、自然妊娠できた人の下位5%にあたる数値をもとに設定されており、「この値を下回ると妊娠しにくくなる可能性がある」ことを示しています。

ただし、基準を超えていれば必ず妊娠できるわけではなく、反対に基準値を下回っていても自然妊娠する人もいます。

精液検査を受けられる場所

精液検査は、主に以下の医療機関で受けることが可能です。

  • 不妊治療を専門とするクリニック
  • 男性不妊に対応する泌尿器科

不妊治療専門クリニックでは、妊娠に関わる検査を男女それぞれ受けられるため、パートナーと一緒に受診しやすい特徴があります。

男性不妊に対応する泌尿器科には、男性の生殖機能を専門とする医師が在籍している施設もあります。精液検査にくわえ、異常が見つかった場合の精密検査にも対応できるケースがあります。

一般的な泌尿器科では精液検査を実施していない場合があるため、検査内容や対応範囲は事前に確認しておくと安心です。医療機関によっては、精液検査をブライダルチェックの一環として提供しています。妊活のファーストステップとして検討してみるのもよいでしょう。

男性のブライダルチェックについては、以下の記事も参考にしてください。

精液の状態をよくするための生活習慣

精液の量が多くても、すぐに特別な治療が求められるとは限りません。また、精子の状態は毎日の習慣に左右されやすいため、まずは現在の生活を見直してみることが大切です。ご自身の体と向き合い、日々の暮らしの中でできることから取り組みましょう。

禁煙・節酒する

精液の状態をよくするためには、禁煙と節酒を心がけましょう。

喫煙は、精子の量や質を低下させる大きな要因です。精子の動きや形が悪くなって妊娠しづらくなるほか、男性ホルモンの分泌や血液の流れを悪くし、勃起障害につながることもあります。

過度なアルコール摂取もホルモンバランスに影響し、精子をつくる過程を妨げることがあります。

適正体重を維持する

肥満の状態も体内のホルモンバランスを乱し、精巣の働きを低下させる一因です。精子の数や運動率、形態に悪影響を及ぼすことがあります。

適正体重の目安となるBMI(体格指数)は、18.5以上25.0未満です。適正体重を目指すためには、食事の見直しにくわえ有酸素運動が効果的です。BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算できます。

海外の研究では、肥満の人が適度な有酸素運動により体重・体脂肪率を減少させた結果、精子の質が改善したと報告されています。

精巣を温めすぎない

精巣は体温より2〜3℃低い温度で正常に機能します。高温にさらされると、精巣の働きは低下し、精子をつくる機能に影響を及ぼすおそれがあります。

長時間のサウナや熱いお風呂は控えめにしましょう。また、ノートパソコンを膝の上で使用する習慣も、精巣の温度を上げてしまう要因となるため注意が必要です。

精液過多症に関するよくある質問

精液過多症についてよくある質問に回答します。

精液量の多い人に特徴はありますか?

精液量が多い人に共通する特徴は、はっきりとわかっていません。ただし、肥満や喫煙、過度な飲酒などの生活習慣は精液量を減らす要因になる可能性があります。また、年齢を重ねることも、精液量の減少に関係していると考えられています。

なお、精液の状態は個人差も大きく、精液検査をしなければ正確には評価できないものです。心配な場合は精液検査を受けてみるとよいでしょう。

精液過多症になるにはどうすればよいですか?

精液過多症は、意図的に目指すべき状態ではありません。精液量の異常は生殖機能に影響を及ぼす可能性があるためです。

精液量について不安がある場合は、精液検査を検討してみましょう。検査を受けることで、自身の状態を正確に把握できます。また、バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠など、日常の生活習慣を整えることも大切です。

禁欲期間の長さと精液量は関係していますか?

禁欲期間が長くなるほど、1回の射精で出る精液量は増加する傾向があります。射精しない期間も精子の産生が続き、精巣上体に蓄積されるためです。ただし、禁欲期間が長すぎると、精子は活性酸素による酸化ストレスを受け、運動能力が低下したりDNAが傷ついたりする可能性があります。

なお、射精の頻度が高い場合は、1回あたりの精液量や濃度は低下しますが、精子の質としてはDNA損傷が少なく良好な状態が保たれます。

精液量は自宅で調べられますか?

自宅用の検査キットを利用して、精液量を簡易的に調べることは可能です。医療機関での検査に抵抗がある方にとって、ひとつの手段となるでしょう。

ただし自宅でおこなう検査は、医療機関で実施する精液検査の代わりにはなりません。測定できる項目には限りがあり、精子の形態まで正確に分析できる製品は多くないためです。

精液の状態は精液量だけでなく、精子濃度や運動率、正常形態率なども踏まえ、総合的に評価する必要があります。自宅検査はあくまでも受診へのきっかけとして活用し、精液の状態を正確に知りたい場合は、医療機関での検査と専門医によるアドバイスを受けることを検討してみてください。

精液の異常は見た目でもわかりますか?

精液の異常を、見た目で正確に判断することはできません。見た目が正常でも、不妊症の原因が隠れていることもあります。精子の数や動きなどは、専門的な検査でなければわかりません。

ただし、精液が変色している(赤色・茶色・黄色・緑色など)場合は、出血や感染症の疑いもあります。

通常、精液は灰色や乳白色で、サラサラとしたゼリーのような形状です。気になる変化があれば、一度泌尿器科に相談してみると安心でしょう。

精液過多症以外にはどのような精液異常がありますか?

精液過多症のほかにも、いくつかの異常が知られています。精子の数や運動性、精液の量に関する代表的な異常は以下のとおりです。

乏精子症 精子の数が少ない状態(精子濃度が1,600万/mL未満)
精子無力症 動いている精子の割合が少ない状態(総運動率が42%未満)
無精子症 射精した精液中に精子が見当たらない状態
精液過少症 1回の射精で出る精液量が1.4mL未満
奇形精子症 正常な形態の精子が4%未満の状態

これらの異常は性機能に問題がないことも多く、自分では気づきにくい特徴があります。知らないうちに不妊の原因となっているケースも少なくありません。精液検査を受け異常に気づくことができれば、原因に応じた適切な対策・治療につなげられます。

なお、男性不妊の原因や検査・治療方法について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

院長からのメッセージ

「精液量が多い」と聞くと、何か問題があるのではないかと心配になってしまいますよね。

精液過多症とは、1回の射精で6.3mLを超える精液が出る状態を指しますが、これは統計的な基準値であり、必ずしも病気や不妊の原因を意味するものではありません。実際、精液量が多くても精子の濃度や運動率が正常であれば、妊娠に問題がないケースがほとんどです。

むしろ重要なのは、精液量だけでなく、精子の数、動き、形など複数の項目を総合的に評価することです。精液検査を受けることで、ご自身の状態を正確に把握でき、必要であれば適切な対策を立てることができます。

また、精子の状態は日々の生活習慣に大きく影響されます。禁煙、節酒、適正体重の維持、精巣を温めすぎないことなど、できることから始めてみましょう。

妊活は二人で取り組むものです。不安なことがあれば、ぜひパートナーの方と一緒にご相談ください。

参考文献

1)World Health Organization. WHO Laboratory Manual for the Examination and Processing of Human Semen. 6th ed. World Health Organization; 2021.
Hartanto MC, Pakpahan C, Utomo AT. Hyperspermia, the often-neglected semen abnormality affecting fecundability. Majalah Biomorfologi. 2024;34(1):60-66. doi:10.20473/mbiom.v34i1.2024.60-66

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Cooke S, Tyler JPP, Driscoll GL. Hyperspermia: the forgotten condition? Hum Reprod. 1995;10(2):367-368.

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Yu S, Rubin M, Geevarughese S, Pino JS, Rodriguez HF, Asghar W. Emerging technologies for home-based semen analysis. Andrology. 2017;6(1):10-19. doi:10.1111/andr.12441

Hajizadeh Maleki B, Tartibian B, Chehrazi M. The effects of three different exercise modalities on markers of male reproduction in healthy subjects: a randomized controlled trial. Reproduction. 2017;153(2):157-174.

こども家庭庁. 男性不妊について. こども家庭庁ウェブサイト.

一般社団法人日本生殖医学会. ウェブサイト.

長野県. 妊活について. 妊活ながのウェブサイト.

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