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最終更新日:
2026-01-15

妊活中、精液の量と妊娠のしやすさの関係について気になる方も多いかもしれません。

まず言えることとして、精液と妊娠のしやすさの関係については、精液の量だけで判断することはできません。また、ある体質の人は精液量が多い・少ないと言えるような、決まった身体的特徴も明確なものはありません。

この記事では、精液量と妊娠の関係、精液量が変動しやすい要因、精液検査で確認できることを整理します。

精液量と妊娠の関係性

精液と妊娠のしやすさの関係について、精液の量が多ければ妊娠しやすいというわけではありません。精液の量だけではなく、精子濃度・精子の総数・運動率・形態などを合わせて見ていくことが大切です。

海外の研究では1)、精液量や精子の動きと妊娠とのあいだに、明確な関連性は認められないという報告があります。一方で、精子濃度や正常形態精子の割合については、妊娠までの期間(time to pregnancy)と関連する傾向が示されています。つまり、精液の量が多ければ妊娠しやすいというわけではなく、精子の「量」や「質」を総合的に見ることが大切なのです。

そのため、妊娠を希望していて精液量や精子の状態が気になる場合は、自己判断せず、医療機関で精液検査を受けて客観的に確認することが大切です。

精液の量や質などを調べる方法:精液検査

精液量を正確に調べるには、医療機関で行う精液検査を受ける必要があります。精液検査は、男性不妊の原因を調べるための基本的な検査で、精液量だけでなく、精子濃度や運動率、形態など、妊娠との関係が深い項目を総合的に確認できます。

ただし、精液検査の結果は一度の数値だけで正確に評価できるとは限りません。精子の状態は、体調や生活習慣、精神的なストレスなどの影響を受けやすく、検査ごとに数値が変動することがあります。

そのため、必要に応じて複数回検査を行い、全体の傾向を見ながら判断される場合があります。

精液検査の基準値

精液検査の結果は、WHO(世界保健機関)が示す基準値2)に照らし合わせて評価されます。

項目 下限基準値
精液量 1.4ml以上
精子濃度 1,600万/ml以上
前進運動率 30%以上
総運動率 42%以上
正常精子形態率 4%以上

上記の数値は、自然妊娠に至ったカップルのうち下位5%に相当するデータから算出されており、妊娠できる可能性のある最低限のラインを示しています。

ただし、これらの数字はあくまでも目安です。基準値を下回っていても自然妊娠できる人もいれば、基準値を上回っていても妊娠が難しいケースもあります。

精液検査を受けるタイミング

精液検査を受けるタイミングは、パートナーの年齢と妊活期間によって変わります。

女性の年齢が35歳未満であれば1年間、35歳以上であれば6か月間妊活しても妊娠しない場合が、検査を考える目安となります。40歳以上の場合は、妊娠を希望した時点で受診を検討しましょう。

精液検査を受けられる場所

精液検査は、不妊症の診療を行う泌尿器科や専門クリニックで受けることが可能です。

精液検査で問題が見つかった場合、男性不妊を専門とする医師による、詳しい診察が必要になります。問題の原因を明らかにするために、超音波をつかった検査やホルモンの数値を調べる検査、染色体・遺伝子を調べる検査などが追加で行われます。

不妊の原因は、半数程度の割合で男性側にもあります。原因を早めに特定するためにも、カップルで検査を受けましょう。

男性不妊の原因について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

精液量の減少につながる要因・生活習慣

精液の量そのものが妊娠のしやすさを直接左右するわけではありませんが、精液量が少ない背景には、精子の状態や体のコンディションに影響する要因が隠れている場合があります。そのため、精液量の変化をひとつの目安として、生活習慣や体調を見直すことは無駄ではありません。

ここでは、精液量の減少を招く可能性がある要因や生活習慣について解説します。

加齢

年齢を重ねると、ホルモンの分泌や精子をつくる機能、精巣の働きが徐々に低下し、精液の量が減少していきます。

精液量は30代半ば頃から減りはじめ、年齢が上がるにつれて精子をつくる能力もさらに衰えていくという調査もあります。

肥満

肥満も、精液量の減少に影響を与える要因のひとつです。

普通体重(BMI25.0未満)の男性と比較して、肥満(BMI30.0以上)の男性では精液量が少なく、正常な形態の精子数も減少する傾向があります。

喫煙

喫煙の習慣があると、精液量が減少するだけでなく、精子のDNA損傷や形の異常が増加します。

詳しい原因は解明されていませんが、タバコの煙に含まれる有害物質(ニコチンや重金属など)が生殖器官の働きに悪影響を与えると考えられています。また、喫煙によって体内の酸素が不足すると、精子をつくる機能にも影響を及ぼす可能性があります。

過度な飲酒

アルコールを過剰に摂取すると、精子がつくられる仕組みに悪影響を与える可能性があります。

大量の飲酒をしている男性の半数以上で、精子が正常につくられない状態が確認されています。また、慢性的なアルコール依存症の患者では、精液量の減少にくわえて、精子の数や動く能力、正常な形をした精子の割合も低下しているという研究報告もあります。

過度なストレス

過度なストレスによって精神的な負担が大きくなると、精子の生成に関わるテストステロンの分泌量が減少し、精子をつくる力の低下につながる可能性があります。

精液の量や質に良い影響を与える生活習慣

精液量を確実に増やす方法は現時点ではありませんが、精子の量や質を守るために日々の生活で気をつけたい習慣を解説します。

適正体重を維持する

肥満になると、精子の数が減ったり、動きが鈍くなったりするという報告が多数あります。

実際、BMIが高くなるほど、精子の数や動く力が低下する傾向が示されています。一方で、体重を適正範囲(BMI18.5〜24.9)に戻すと、精子の状態が改善されるケースも報告されています。

体重管理には、適度な運動やバランスの良い食事が欠かせません。日々の小さな積み重ねが、適正体重の維持につながります。

禁煙・適度な飲酒

喫煙している人は禁煙を、飲み過ぎている人は飲酒量の見直しを検討しましょう。

たばこに含まれる有害物質は、精子の数や運動能力、形に悪影響を与えます。過度な飲酒も、精子がつくられる働きを妨げる可能性があります。

適量とされる飲酒量は、1日平均で純アルコール約20g以下とされています。ビール中瓶1本(500ml・アルコール度数5%)が目安になります。

ストレス解消

精液の状態を良好に保つためには、リラックスできる環境を整える工夫も大切です。心身に過度な負担がかかると、精子の数が減ったり、動きが悪くなったりする可能性があります。

日常生活では十分な睡眠を確保したり、趣味の時間を持ったりするなどして、自分に合った気分転換の方法を見つけましょう。

精巣を温めすぎない

精巣は、体温より2〜3℃低い環境でよく働くといわれており、周辺温度が高くなると機能が低下する可能性があります。

妊活を検討している場合は、精巣を温めすぎない習慣を意識しましょう。

  • 長時間のサウナや熱い湯での入浴は控える
  • ノートパソコンを膝の上で長く使わない
  • 体に密着する下着を日常的に着用しない
  • 座った姿勢が続く際は適度に休憩を取る

なお、密着する下着と長時間の座り姿勢については大きな影響はないとする報告もあり、専門家の間でも意見が分かれています。

精液量が多い人の特徴に関連したよくある質問

ここでは、精液量が多い人の特徴に関するよくある質問について解説します。

禁欲期間が長いと精液量は多くなる?

禁欲期間が長くなると、精液量は増える傾向にあります。

2〜7日(WHO推奨期間)禁欲した男性と比較すると、7日を超える禁欲では精液量や精液濃度が多くなり、0〜1日では少なくなるとの報告があります。

ただし、禁欲期間が長すぎると、酸化による劣化が進んでしまい、精子が元気に動けなくなったり、遺伝情報が傷ついたりするリスクが高まる可能性があります。逆に禁欲期間が短いと、精液量や精液濃度は少なくなりますが、運動率が上がったりDNA損傷率が下がったりと、精子の質は向上します。

なお、精液検査を受けるときは、WHO(世界保健機関)のガイドラインに基づき、検査の2〜7日前から射精を控えることが求められます。これは検査データを正しく比較・評価するための基準であり、普段の妊活で最適とされる射精のペースとは目的が異なります。

精液量が過度に多くなってしまうことはある?

原因ははっきりしていませんが、遺伝子の変化や精嚢・前立腺などの感染により、精液量が過度に多くなる場合があります。

精液量が6.3mlを超える場合は「精液過多症」と呼ばれます。なお、この数値は、WHOデータに基づく参考値であり、医学的な診断基準として定められているものではありません。

精液量が多すぎると精子が薄まって濃度が低下するため、妊娠しにくくなる可能性があるとされています。

精液過多性について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

自宅でも精液量のチェックはできる?

自宅でも簡易検査キットを利用すれば、精液量のおおまかな目安は確認できます。ただし、測定できる項目や精度には限界があり、医療機関で行なう精液検査の代わりにはなりません。

正確な精液量を把握したい場合は、不妊症の診療を行なう泌尿器科や専門クリニックでの精液検査を検討してください。

精液の質の良し悪しは見た目でチェックできる?

見た目だけで精子の状態を正確に判断するのは困難です。精液に異常が見当たらなくても、男性不妊症と診断されるケースは珍しくありません。

ただし、注意すべき変化もあります。黄色や緑色、ピンクへの変色がある場合は、感染症が考えられます。水のように薄い状態や量の明らかな減少も、気をつけたい変化といえます。

精子の質を正確に評価する方法は精液検査です。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関の受診を検討しましょう。

院長からのメッセージ

「精液の量が妊娠に影響しますか?」というご質問をよくいただきます。

まずお伝えしたいのは、精液の量が多ければ妊娠しやすいというわけではないということです。大切なのは、精液の量だけでなく、精子の濃度、運動率、形態など、さまざまな要素を総合的に見ることです。

実際、海外の研究でも、精液量と妊娠のしやすさには明確な関連性が認められていません。むしろ、精子濃度や正常な形をした精子の割合の方が、妊娠に関係する傾向が示されています。

精液検査は、体調やストレスの影響を受けやすいため、1回の結果だけで判断せず、複数回検査することもあります。

精液の状態を良好に保つためには、日々の生活習慣が大切です。適正体重の維持、禁煙、適度な飲酒、ストレス解消、精巣を温めすぎない工夫など、できることから始めてみてください。

精液量について気になる方は、まず精液検査を受けて、客観的に確認してみましょう。お二人に合った妊活の方法を、一緒に考えていきましょう。


参考文献

1)Louis GM, Sundaram R, Schisterman EF, et al.
Semen quality and time to pregnancy: the Longitudinal Investigation of Fertility and the Environment Study.
Fertility and Sterility
. 2014;101(2):453–462.

2)World Health Organization. WHO Laboratory Manual for the Examination and Processing of Human Semen. 6th ed. World Health Organization; 2021.
日本生殖医学会

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