第二子の不妊の原因には、加齢による卵子・精子の質の低下や婦人科疾患の罹患率の上昇、帝王切開での出産による子宮の傷の影響などがあります。
この記事では、2人目不妊の原因や受診のタイミング、検査方法、妊娠率を高めるポイントについて解説します。
2人目不妊とは
2人目不妊とは、一般的には第一子を出産後、第二子を望んでいるにもかかわらず、なかなか妊娠できない状態をさします。
医学的には、出産の有無にかかわらず流産や子宮外妊娠も含めて一度でも妊娠経験があり、その後避妊せずに性交渉を続けても一定期間妊娠しない場合に該当し、続発性不妊と呼ばれます。一定期間の目安は、35歳未満であれば1年、35歳以上では6ヶ月というのが一般的です。
2人目不妊になる主な原因
2人目不妊になる主な原因はさまざまです。女性側だけではなく男性側に原因があるケースもあります。
加齢による卵子の質・数の低下(女性)
加齢によって卵子の質や数が低下すると、妊娠する力は弱まっていきます。
卵子の質が下がると、受精率や着床率が低下するだけでなく、染色体異常による流産のリスクも高まります。また、生まれた時点で約200万個あった卵子は、思春期を迎えるまでに約30万個にまで減ります。そして37歳を過ぎると減少のスピードはさらに加速し、卵子の数が1,000個を下回ると閉経を迎えます。
加齢による婦人科疾患の罹患率の上昇(女性)
女性は年齢が上がるほど、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症といった婦人科疾患にかかるリスクが高まります。これらの病気が長引いたり悪化したりすると、子宮や卵巣、卵管などに問題が生じて、2人目不妊の原因になる場合があります。
子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、筋腫が大きくなって子宮の内側に飛び出すと、受精卵の着床やその後の成長を妨げてしまう可能性があります。
子宮内膜症が進行すると、卵管周囲に癒着が起こり、卵子の取り込みが妨げられます。また、骨盤内の環境の悪化により、受精卵の着床や成長が阻害される場合もあります。
子宮腺筋症では、慢性的な炎症や子宮内膜の状態の変化により、受精卵が着床しにくくなったり、流産のリスクが高まったりする可能性が指摘されています。
加齢による精子の質・数の低下(男性)
加齢による精子の数や運動力の低下、DNAの損傷の増加も、2人目不妊の原因になります。
男性の精巣では生涯にわたって精子が作られ続けますが、年齢を重ねるごとにその機能は徐々に低下していきます。
いくつかの研究で、35歳前後から精液量や運動率の低下がみられ、50歳以上では精子 DNA の断片化が若年男性に比べて明らかに増加することが報告されています。
帝王切開や婦人科手術による子宮の跡(女性)
帝王切開や子宮の手術後には、縫った部分の子宮前壁がくぼんだ状態になることがあり、それによって様々な症状がでる状態を「帝王切開瘢痕症候群」と呼びます。なお、以前は子宮峡部瘤と表現されることもありました。
このくぼみに経血や分泌物がたまると、子宮内の環境が乱れ、精子の通り道が妨げられたり、精子の動きが悪くなったり、受精卵の着床に影響する可能性があると考えられています。
帝王切開後の女性の一部にこの瘢痕部のくぼみがあり、不妊との関連が示唆されています。ただし、瘢痕があっても問題なく妊娠・出産される方も多く、必ず不妊の原因になるわけではないため、症状や不妊期間、年齢などを総合して主治医が治療の必要性を判断します。
授乳にともなうホルモン変化(女性)
授乳中は、母乳を作るホルモンであるプロラクチンの分泌が増えるため、排卵が再開しにくく、妊娠しづらい状態になります。
プロラクチンは排卵に必要なホルモンの分泌を抑える働きがあるため、授乳中は排卵が起こりにくくなります。
一般的に、授乳回数が多い・夜間授乳が続く・授乳期間が長いほど、排卵再開は遅くなる傾向があります。ただし個人差があり、授乳中でも排卵が再開して妊娠に至るケースもあります。
そのため、2人目を希望している場合は、授乳の頻度と妊活のタイミングを医師と相談しながら調整することが推奨されます。
性交頻度の減少
第一子の育児による疲労やストレスなどによって、性交渉を行う回数が減少することもあります。また、妊娠希望による焦りからプレッシャーのある性生活が続くと、夫婦関係をギクシャクさせセックスレスを招くおそれがあります。
タイミングにこだわりすぎず、夫婦が自然な形でスキンシップを取れる関係性を大切にしましょう。リラックスした雰囲気での夫婦生活が、結果として妊娠しやすい環境を作ります。
生活習慣による妊娠への悪影響
日々の生活習慣が、2人目不妊の原因となっている場合もあります。
一般的にBMI 18.5〜24.9が適正体重とされており、女性ではこの範囲から大きく外れると、ホルモンバランスや排卵に影響し、不妊のリスクが高まることがわかっています。
海外の大規模調査では、BMI 30以上の女性では、不妊症のリスクが正常体重の女性に比べて約2〜3倍高くなると報告されています。
体外受精などの不妊治療においても、高度のやせ(BMI 18.5未満)や肥満(BMI 25以上・30以上)では、妊娠率や出産率の低下、流産リスクの上昇と関連することが報告されています。男性の場合も、肥満は精子の数や運動率の低下と関連しているという報告が多く、BMIが高くなるほど精子数・運動性が下がる傾向が示されています。
また喫煙も、精子の濃度や運動率を下げ、奇形率を上昇させます。ニコチンによる影響で血流が悪化し、勃起障害になるおそれもあります。女性では、卵子の質の悪化につながる可能性があります。
生活習慣の見直しは、今日からはじめられる不妊対策です。体重管理や禁煙など、できるところから少しずつ取り組んでいきましょう。
2人目不妊が疑われる場合の受診の目安
日本では、妊娠を希望する健康な男女が避妊せずに性交渉を続けているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合を不妊症と定義しています2)。女性の妊娠率は30歳を過ぎると徐々に低下しはじめ、35歳前後からはさらに妊娠しにくくなり、流産のリスクも高まります。
米国生殖医学会では、女性の年齢が35歳未満であれば1年間、35歳以上の場合は6か月間妊娠しなければ、検査をはじめるよう推奨しています3)。
また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)による月経不順や無排卵、子宮内膜症・子宮筋腫による月経痛などがある場合は、不妊症の可能性が高まります。
気になる症状がある場合は、早めに医療機関の受診を検討しましょう。
2人目不妊の原因を調べる方法(女性)
2人目不妊の検査内容は、経腟超音波検査や子宮卵管造影検査、ホルモン検査などがあります。
経腟超音波検査
経腟超音波検査は、子宮や卵巣の状態を詳しく観察する検査です。子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープといった妊娠を妨げる可能性のある病変がないかを確認できます。
また、月経周期に合わせて検査をすれば、卵巣内の卵胞の成長具合や排卵が正常に起きているかも調べることが可能です。
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査は、造影剤をつかって卵管の詰まりや子宮の形の異常を調べる検査です。
検査では、造影剤が子宮内を満たし、卵管を通って腹腔内に流れ出る様子をX線で撮影します。撮影された画像により、卵管が正常に通っているか、子宮に異常がないかを把握できます。
なお、子宮卵管造影検査では、圧力をかけて造影剤を注入して卵管を通すことによって卵管の通りが改善され、3~6ヶ月程度妊娠率が上がる治療効果も期待できます。
ホルモン検査
ホルモン検査(血液検査)は、妊娠に関係するホルモンの分泌状態を調べる検査です。
主な検査項目は、以下のとおりです。
妊娠に関わるホルモン検査について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査
抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査は、卵巣にどれくらい育とうとしている卵子があるかを調べるための検査です。
AMHは、発育途中の卵胞から分泌されるホルモンで、育とうとしている卵子の数が反映されます。その数値から卵巣に残る卵子数の目安を推測できます。
ただし、AMH検査でわかるのはあくまで卵子の数であり、卵子の質については評価できません。
2人目不妊の原因を調べる方法(男性)
男性の主な不妊検査には、精液検査やホルモン検査などがあります。
精液検査
精液検査では、精子の濃度や運動率などを測定します。体調やストレス、採取時の環境などによっても数値が大きく変動するため、1回の検査結果だけで判断せず、状況に応じて複数回の検査を行う場合があります。
ホルモン検査
ホルモン検査(血液検査)では、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)などのホルモン値を測定します。
FSH値は、精子の通り道が詰まっている閉塞性無精子症か、精子を作る機能自体に問題がある非閉塞性無精子症かを判断するための、重要な手がかりになります。
2人目不妊の治療法
検査で不妊の原因が判明した場合は、原因に応じた治療をおこないます。原因が特定できない場合は、女性の年齢や卵巣機能、男性の精液検査結果などを踏まえて、治療方針が決定されます。
たとえば、35歳未満で卵巣機能が良好なら、タイミング法から開始し、必要に応じて人工授精を経て、生殖補助医療(ART)へと段階的に進みます。
一方、35歳以上の方や、卵巣機能の低下がみられる場合は、タイミング法と人工授精を合わせて6回程度までとし、生殖補助医療への早めのステップアップが検討されます。
タイミング法
タイミング法は、最も妊娠しやすい排卵の1〜2日前から排卵当日に性交渉を持つ治療法です。超音波検査で卵胞の大きさを確認したり、尿中のホルモン値を測定したりしながら、排卵日を正確に予測していきます。
タイミング法で妊娠に至らない場合は、人工授精へのステップアップを検討します。
人工授精
人工授精は、採取した精子をカテーテルと呼ばれる細い管をつかって、子宮内へ直接注入する治療法です。運動性の高い精子を選別し調整してから、子宮内に注入します。
1回あたりの妊娠率は5〜10%程度で、4回以上実施した場合の累積妊娠率は、40歳未満で約20%、40歳以上で10〜15%となっています。
人工授精を続ければ、統計上は6〜8回目くらいまで累積の妊娠率は少しずつ上がっていくという報告もあります。ただし、1回あたりの妊娠率は回数を重ねても大きくは上がらず、女性の年齢や不妊の原因、治療にかけられる時間や費用を考えて、多くの施設では3〜4回程度を目安に体外受精・顕微授精へのステップアップを検討することが一般的です。
体外受精・顕微授精
体外受精(c-IVF)は、卵巣から採取した卵子を、体の外で精子と受精させる治療法です。シャーレ上で卵子と精子を出会わせ受精を促します。受精が成立したら、受精卵を3〜5日間培養した後、カテーテルを使って子宮内に戻します。
顕微授精(ICSI)は、顕微鏡で観察しながら、卵子に直接精子を注入する方法です。受精後の培養期間や移植方法は体外受精と同じで、成功率も同程度となっています。
体外受精・顕微授精においても、年齢が上がるにつれて、妊娠率が低下する傾向にあります。
2人目不妊の妊娠率を高めるためのポイント
ここでは、2人目不妊の妊娠率を高めるためのポイントについて解説します。
妊娠しやすいタイミングで性交する
妊娠率を高めるためには、最も妊娠確率が高い時期(排卵日の1〜2日前から排卵日当日)に性交渉を行うのが効果的です。
排卵日を知る手段として、基礎体温の測定があります。数か月にわたって記録すると、月経周期のパターンを把握することができます。
また、排卵日予測検査薬をつかうと、尿中のホルモン濃度から排卵の兆候を捉えられます。基礎体温の計測と併用することで、より精度の高い予測が可能になります。
生活習慣を見直す
妊娠しやすい体づくりには、日々の生活習慣の見直しが欠かせません。バランスのとれた食事や適度な運動をおこない、BMI 18.5〜24.9程度を目標に適正体重の維持を心がけましょう。また、過度なストレスを受けると、ホルモンバランスが乱れやすくなるので、心身ともにストレスを減らす生活を意識することも有効です。
また、喫煙も男女ともに不妊症のリスクを高めます。女性では、妊娠率の低下や流産率の上昇、閉経時期が早まるとの報告があります。男性では、喫煙により精子の濃度や運動率が低下し奇形率が上昇することにもつながります。
2人目不妊に関するよくある質問
ここでは、2人目不妊に関するよくある質問について解説します。
Q:2人目だと不妊になりやすい?
出産経験の有無によって、妊娠のしやすさに大きな差は見られません。ただし、女性の年齢が上がるにつれて、妊娠しにくくなる傾向があるため注意が必要です。
いくつかの調査では、妊娠を希望しているカップルのうち40代では不妊症と診断される割合が6割前後に達するとする報告もあり、加齢の影響は無視できません。20〜30代でも徐々に妊娠しにくくなることが知られており、年齢を意識した妊活や治療の検討が重要です。
Q:帝王切開は2人目の不妊に影響する?
帝王切開が2人目の妊娠に影響する可能性はゼロではありませんが、すべての方に当てはまるわけではありません。
帝王切開を経験した女性では、子宮峡部瘤が20〜70%の割合で認められていて、そのうちの4〜19%の方に不妊のリスクがあるという報告があります4)。
Q:2人目不妊の検査・治療はいつからはじめたほうがよい?
検査や治療をはじめる目安は、現在の年齢によって変わります。
女性の年齢が35歳未満であり、妊活をはじめて1年経っても妊娠に至らなければ、医療機関の受診を考えましょう。一方、35歳以上の方は、1年を待たずに早めに検査を受けるのが望ましいです。
Q:2人目不妊が疑われる場合は男女ともに受診したほうがよい?
2人目不妊が疑われる場合は、男女揃っての受診が推奨されます。
不妊の原因は女性だけにあるわけではありません。WHO(世界保健機関)の調査では、不妊症の男女のうち、男性のみに原因があるケースが24%、男女双方に原因があるケースが24%でした。つまり、不妊に悩む男女の約50%では、男性側にも不妊の要因が関わっています。
男女で一緒に受診して検査を受ければ、不妊の原因を効率的に把握でき、治療もスムーズに進められることができます。
院長からのメッセージ
「1人目は自然に授かったから、2人目もすぐにできるはず」
——たしかにその考え方には一理あります。出産されているということは、その時点では間違いなく妊娠できる身体であった証拠です。しかし実際には、その時とは状況が異なっています。
最も重要なのは時間の経過です。たとえば第一子出産の2年後に妊活を始めたとすると、その2年間で卵子の数も質も低下しています。年齢とともに子宮筋腫や子宮内膜症などの罹患率も上昇します。
また、男性も加齢により精子の質が低下します。WHO調査では、不妊の約50%に男性側の要因が関わっていることが分かっています。
その他に、帝王切開後の子宮の状態、授乳によるホルモン変化、育児疲れによる性交頻度の減少なども影響します。これらの要因が重なることで、「前は妊娠できたのに、なぜ今回は妊娠しないのだろう」という状況が生まれているのです。
育児をしながらの受診は大変ですが、35歳未満なら1年、35歳以上なら半年を目安に、ご夫婦で一緒に検査を受けることをお勧めします。早めの確認が、第二子への近道になります。
参考文献
1)Beguería R, García D, Obradors A, Poisot F, Vassena R, Vernaeve V. Paternal age and assisted reproductive outcomes in ICSI donor oocytes: is there an effect of older fathers? Hum Reprod. 2014;29(10):2114-2122.
https://academic.oup.com/humrep/article/29/10/2114/647570
2)日本産科婦人科学会.不妊症.日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/citizen/5718/
3)American Society for Reproductive Medicine. Definition of infertility. Practice Committee Documents. ASRM
https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/definition-of-infertility/
4)NIH: Isthmocele and Infertility(子宮頸管ヘルニアと不妊症)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11050579/
*Abstract・6.1. Infertility

