卵子の発育が遅い、排卵のタイミングが安定しないといった排卵の問題がある場合、不妊治療の選択肢として、クロミッドなどの排卵誘発剤が用いられることがあります。
クロミッドは、不妊治療や生殖補助医療の現場で広く使われている薬ですが、正しく使用するためにも副作用や注意点を理解しておくことが重要です。
本記事では、クロミッドの副作用の内容や起こりやすい症状、服用時に知っておきたい注意点について解説します。
クロミッドとは
クロミッド(一般名:クロミフェンクエン酸塩)は、排卵が起こりやすいホルモン状態へ導くために用いられる排卵誘発剤です。
女性ホルモンであるエストロゲンの働きを一時的に抑えることで、脳から分泌される排卵に必要なホルモンを増やし、卵子の入れ物である卵胞が育ちやすい環境を整えます。
クロミッドによってエストロゲンの働きが弱まると、脳は「排卵の準備が不足している」と判断し、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)の分泌が促される仕組みです。
クロミッドは、排卵障害がある場合だけでなく、人工授精や体外受精などの生殖補助医療(ART)において、卵胞の育つタイミングや数を調整する目的で使用されることもあります。
クロミッドの主な副作用
クロミッドの服用によって現れる副作用には個人差があり、症状の種類や出現頻度には幅があります。
主な副作用を頻度別にまとめると、以下のようになります。
・時々起こる可能性のある副作用(0.1~5%未満)
- 頭痛、気分の変動
- 吐き気・嘔吐
- 発疹
- 肝機能の数値上昇
- 顔のほてり
・まれに起こる副作用(0.1%未満)
- 目のかすみ、霧がかかって見える
- 食欲不振
- 脱毛、口の渇き、疲労感など
・よく起こるもしくは頻度が不明な副作用(5%以上または頻度不明)
- 精神的な変調
- 虚血性視神経症
- 発疹
これらの副作用の多くは軽度で一時的なものとされており、服用を中止すると自然に回復するケースがほとんどです。
ただし、まれではあるものの注意が必要な症状もあるため、体調の変化を感じた場合は自己判断せず、医師に相談することが大切です。
参考のために、クロミッドの添付文書に記載されている主な副作用と出現確率もお示しします。1)。
視覚異常(目のかすみ・霧がかかって見えるなど)
クロミッドの副作用として、「目がかすむ」「ぼやけて見える」「霧がかかったように感じる」といった視覚の異常が報告されています。
頻度は高くありませんが、見え方に違和感を覚えた場合は、処方医に連絡して服用を中止したうえで、速やかに眼科を受診する必要があります1)。目のかすみなどの症状が出ている間は、車の運転や事故につながるおそれのある作業は避けてください。
多くの場合、服用を中止すると自然に回復するとされていますが、なかには症状が長引く例や、服用を終えてから症状が現れる例も報告されています。そのため、服用中だけでなく、服用後も見え方に変化を感じた場合は医師に相談してください。
精神神経症状(頭痛・気分の変動)
クロミッドの副作用として、頭痛や気分の落ち込み、理由のないイライラなどの精神神経症状がみられることがあります。これはホルモンバランスの変化によるもので、多くは一時的とされています。
ただし、日常生活に支障が出るほど症状が強い場合や、頭痛が続く場合は、自己判断で服用を中止したり市販薬を使用したりせず、主治医や薬剤師に相談することが大切です。
消化器症状(悪心・嘔吐など)
クロミッドの服用中、吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が現れることがあります。発生頻度は0.1~5%未満とされています1)。
特に、吐き気や嘔吐に加えて、お腹の張りや強い腹痛、急激な体重増加、尿量の減少などをともなう場合は、「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」の可能性があるため、早めに医師へ相談してください。
その他にみられる症状
そのほか、以下のような副作用が報告されています。
- 顔のほてり感(顔面紅潮)
- 尿量の増加
- 喉の渇き
- 疲労感
- 発疹
顔のほてり感は、クロミッドが女性ホルモンの働きを抑える作用をもつため、一時的に更年期のような症状を感じることがあるとされています。
これらの症状は服用終了後に落ち着くことが多いものの、生活に支障が出るほどつらい場合や、発疹が広がる場合は、我慢せずに主治医や薬剤師へ相談しましょう。
クロミッドの重大な副作用|卵巣過剰刺激症候群(OHSS)
クロミッドの服用により、まれではありますが「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」と呼ばれる重大な副作用が起こることがあります。
OHSSは、排卵を促す作用が過剰に働くことで多数の卵胞が発育して卵巣が腫れたり、卵胞から分泌されるホルモンなどの物質の作用で腹水や胸水がたまることで、腹痛や浮腫、呼吸困難などの症状が現れる状態です。
クロミッドは注射薬と比較すると作用が穏やかな薬であり、クロミッド単独でのOHSSの発生頻度はごくまれだとされています2)。
ただし、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方などでは卵胞が育ちやすいため、特に注意が必要です。次のような症状がみられた場合は、自己判断せず、速やかに主治医へ相談してください。
- お腹の張ってウエストがきつい、苦しい
- 急激に体重が増えた(1kg/日以上)
- 尿量が少なくなる
- 吐き気がある
- むくみがある
これらの症状を放置すると、胸に水がたまって息苦しくなる、血栓ができやすくなるなどの合併症につながるおそれがあります。
気になる症状がある場合は、早めにクロミッドを処方された医療機関に相談しましょう。
クロミッドを服用するうえでの注意点
クロミッドは卵胞の発育を促して排卵に導く効果が期待できる薬ですが、作用の特性上、服用にあたって注意しておきたい点もあります。
多胎妊娠となる可能性がある
クロミッドの服用により複数の卵胞が育つと、双子や三つ子といった多胎妊娠となる可能性がわずかに高くなります。自然妊娠での双子の確率(約1%)と比べると、クロミッド服用時は8~10%程度と報告されています2)。
多胎妊娠は、母体への負担が大きくなるほか、早産や低出生体重児のリスクが高まることが知られています。そのため、超音波検査で卵胞が育ちすぎていると判断された場合など、安全を優先してその周期の治療を中止または変更することもあります。
安全な妊娠のためにも、医師の指示に従って治療を進めることが大切です。
妊娠成立後は服用しない
クロミッドは、妊娠が成立した後の服用は避ける必要があります。動物実験では胎児への影響が報告されているため、妊娠中の安全性が確立されていません。
誤って服用を続けてしまうのを防ぐためにも、服用前や次の周期に入る前には、妊娠していないことを確認することが重要です。
また、自身の体のリズムを把握する目的で、クロミッド服用の1か月前から治療期間中は基礎体温を記録しておくと、高温期が続くといった変化に気付きやすくなり、妊娠初期の誤った服用を避ける助けになります。ただし、基礎体温測定がストレスになる場合は、妊娠検査薬の使用など他の方法もあるため医師に相談してください。
子宮内膜が薄くなることがある
クロミッドを数周期にわたって服用すると、薬の作用により子宮内膜が薄くなることがあります。
子宮内膜は月経として排出される組織であるため、内膜が薄くなることで月経量が減ったと感じる方もいます。また、受精卵が着床する場所でもあるため、不安に感じることもあるでしょう。
多くの場合、子宮内膜の変化は一時的で、クロミッドの休薬によって改善するとされています。気になる変化がある場合は、かかりつけの医師に相談すると安心です。
頚管粘液(おりもの)の量が減ることがある
クロミッドの服用により、頚管粘液(おりもの)の量が減ることがあります。頚管粘液は排卵期に増え、精子が腟から子宮、卵管へ進むのを助ける役割があります。
そのため、頚管粘液が減少すると、精子が子宮や卵管へ移動しにくくなる可能性があります。「おりものが減った気がする」と感じた場合でも、自己判断で服用を中止せず、医師に相談しましょう。
クロミッドの副作用・服用に関するよくある質問
クロミッドについてのよくある質問について回答をまとめました。
クロミッドの副作用はいつからいつまで続く?
クロミッドの副作用の多くは軽度で一時的なものであり、服用を中止すると徐々におさまっていくとされています。
ただし、副作用の出方や症状が続く期間には個人差があります。
クロミッドは処方された期間、医師の指示どおりに服用することが基本ですが、つらい症状がある場合は自己判断で中止や減量をせず、早めに医師へ相談することが大切です。
クロミッドの副作用がきつい時はどうしたらいい?
副作用がつらいと感じた場合は、自己判断で服用を中止したり、別の薬を追加したりせず、まずはかかりつけ医へ相談してください。
クロミッドは通常、医師の指示どおり服用することが基本ですが、症状によっては用量の調整や、別の治療法へ切り替えることが検討される場合もあります。
ただし、お腹の張りや吐き気、尿量の減少、急激な体重増加などがみられる場合は、重篤な副作用である卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の可能性があるため、速やかに医師へ相談しましょう。
クロミッドを長期的に飲んだら副作用はでやすくなる?
クロミッドを数周期にわたって服用すると、子宮内膜が薄くなったり、頚管粘液(おりもの)が減ったりすることがあります。これらは妊娠しにくくなる要因となる可能性があるため、クロミッドは長期間使用し続ける薬ではありません。
一般的には、治療期間は3~6周期を目安に効果を評価し、それまでに妊娠に至らない場合は、別の治療法へ移行することが検討されます2)。
なお、そのほかの副作用については、多くが軽度で一時的であり、服用を中止すると改善するとされています。
院長からのメッセージ
クロミッドを初めて服用される方や、服用中に体調の変化を感じている方は、副作用について心配になることも多いでしょう。そのような不安を感じることは、とても自然なことです。
クロミッドの副作用の多くは軽度で一時的なものですが、なかには特に注意が必要な症状もあります。たとえば、目がかすむ、ぼやけて見えるといった視覚の変化を感じたときは、すぐに処方医に連絡して服用を中止して眼科を受診してください。また、お腹が強く張る、急に体重が増えた、尿の量が少なくなったといった症状がある場合も、早めに医師に相談していただきたいです。
クロミッドを数周期使用すると、月経量が減ったり、おりものが少なくなったりすることがあります。これは薬の作用によるもので、多くは一時的な変化です。
気になる症状があるときは、「こんなことで相談していいのかな」と遠慮せず、ぜひ主治医に伝えてください。不妊治療は、身体的にも精神的にも負担がかかるものです。薬の効果だけでなく、ご自身の体調や気持ちにも目を向けながら、医師やパートナーと一緒に治療を進めていくことが大切です。
どんな小さな変化や不安でも、まずは相談してみてくださいね。お一人で抱え込まずに、周りのサポートを頼ってください。
参考文献

