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最終更新日:
2026-05-06

不妊治療と仕事の両立に悩む方は少なくありません。通院日が急に決まったり、待ち時間が読めなかったりと、スケジュール管理の難しさを理由に退職を選ぶ人もいます。一方で、近年は支援制度の整備に伴い、両立できる環境も少しずつ広がっています。

この記事では、治療ステップ別の通院頻度の目安から、職場への相談のコツ・活用できる制度、仕事を続けるか休職・退職するかの判断ポイントまで詳しく解説します。

不妊治療と仕事の両立の状況は?

不妊治療と仕事の両立の状況について、厚生労働省が不妊治療を実際に行った人に対して実施したアンケート結果があります。2017年の厚生労働省の調査では、不妊治療と仕事の両立ができずに退職した人は16%という結果でした1)。一方で、2023年の同様の調査では10.9%となっており2)、ここ数年で両立できずに退職する人は少し減っている状況です。

ただし、同じ調査で不妊治療に対する支援制度がある企業の割合は、2023年調査でも26.5%であり、2017年の9%からは増えているものの必ずしも十分な状況とは言えません。今でも不妊治療と仕事の両立には難しい場合がある状況といえます。

不妊治療で仕事を休む頻度はどれくらい?通院日数や時間の目安

不妊治療の通院は、治療のステップやそのときどきの体の状態によってスケジュールが変わります。ここでは厚生労働省が公開している「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」に掲載されている内容3)に沿って、不妊治療で通院にかかる日数や診療時間の目安を、一般不妊治療と生殖補助医療に分けて解説します。

一般不妊治療(タイミング法・人工授精)の日数や時間の目安

ステップ スケジュールの目安
不妊原因の探索(不妊検査) 最短で2か月程度
一般不妊治療(タイミング法・人工授精) それぞれ3~6か月程度
全体 半年〜1年程度

一般不妊治療では、不妊の原因を調べる検査から始まるのが一般的です。不妊原因の探索が1-2か月程度、その後の各治療(タイミング法・人工授精)にはそれぞれ3~6か月程度、全体では半年〜1年というのが治療期間の目安となります。

ただし、これらのスケジュールは不妊の原因が見つけやすいものかどうかや、治療で妊娠が成立するかどうかによっても大きく変わってきます。

一般不妊治療 女性 男性
月経周期ごとの通院回数目安 1回1~2時間程度の通院を2~6回 1回1時間程度の通院を0~1回
※手術を伴う場合には1日必要

通院頻度と診療時間については、1回の月経周期あたりで女性は2〜6日程度、1回の診療時間は1〜2時間程度とハンドブックに記載されています。

男性側は基本的には精液の採取や提出の通院となりますが、自宅で採精する場合は通院が必須でないケースもあります。不妊原因に対する手術は、実施できる施設は泌尿器科などに限定されるため、事前に確認が必要です。

この通院頻度や診療時間についても、医療機関の治療方針や体の状態によって変わる可能性があり、さらに1回の通院時間については、診療までの待ち時間も含めて予定しておくことが重要です。

また、一般不妊治療では月経周期に合わせて通院日を決めることも多く、急に通院日が決まるケースがあることも知っておくようにしましょう。職場の就業規則にもよりますが、通院初期の時期は終日で休みを取り、通院スケジュールのおおよその感覚がわかってきたら、時間単位の休暇や半日休暇などを検討するのもよいでしょう。

生殖補助医療(体外受精・顕微授精)の日数や時間の目安

生殖補助医療は、一般的に検査、排卵誘発、採卵・凍結、胚移植という過程で実施し、「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」では1回の治療期間として最短で3か月、一般的には約6か月としています。

一般不妊治療からのステップアップの場合は、実施済みの検査は省略されることも多く、すぐに治療に入る場合もあります。また、1度の採卵で複数の胚を凍結すると、次回以降は胚移植のみ実施というケースもあり、同じ1回の治療であっても、スケジュールが大きく異なる場合があります。

生殖補助医療 女性 男性
月経周期ごとの通院回数目安 1回1~3時間程度の通院 4~10回
       +
1回3~6時間程度の通院 1~2回
0~1回
※手術を伴う場合には1日必要

通院頻度や診療時間については、1回の月経周期あたりで女性は、診療時間1〜3時間程度の通院が4〜10日、診療時間3〜6時間程度の通院が1〜2日必要となります。男性側は一般不妊治療のケースと大きな変わりはなく、0〜1回(※手術を伴う場合には1日必要)です。

生殖補助医療の通院頻度や診療時間も、医療機関の方針や治療の経過に大きく左右される面があります。また、一般不妊治療と同様、医療機関の待ち時間も考慮する必要があります。

一般不妊治療と大きく異なる点として、生殖補助医療では卵子を取り出す処置(採卵)が必要となります。採卵前は、排卵誘発剤に対する卵巣の反応によっても来院の回数が変わってくるため、このステップでは必要な通院回数が予測しにくいことを、あらかじめ把握しておくようにしましょう。

仕事と不妊治療を両立する具体的な方法と活用できる制度は?

仕事と不妊治療を両立する具体的な方法では例として以下が挙げられます。

・通院しやすい医療機関を選ぶ
・パートナーと役割分担をする
・職場に相談し制度の活用や働き方の調整をする

それぞれ解説します。

通院しやすい医療機関を選ぶ

仕事と不妊治療を両立する上で、通院しやすい医療機関を選ぶことは重要です。

2023年の厚生労働省の調査では、仕事と不妊治療の両立ができなかった理由として、「病院と会社と自宅が離れていて、移動が負担であるため」が20.9%であり3)、移動の負担も両立できなかった理由として挙げられています。

職場や自宅から無理なく通える圏内の立地を選ぶことのほか、医療機関の診療時間や曜日などもしっかり確認しておきましょう。また、待ち時間の対策をしているかなども確認しておきたいポイントです。

もちろん望んでいる治療が受けられるかという点も含めて、確認しておくようにしましょう。

パートナーと役割分担をする

パートナーとの役割分担も、仕事と不妊治療を両立する上では押さえておきたい点です。不妊治療を始めることで、今までの生活に通院する時間が増えることになります。

特に、採卵や移植の時期は通院回数が増えたり、急な受診が必要になったりすることもあるため、ひとりで抱え込むと心身の負担が大きくなりやすいでしょう。

2023年の厚生労働省の調査では、仕事と不妊治療の両立ができなかった理由として、「精神面で負担が大きいため」が44.8%、「体調、体力面で負担が大きいため」が40.3%という結果であり3)、精神面と体力面の負担は、多くの人が両立できなかった理由として挙げています。

通院の付き添いや送迎、医師からの説明を一緒に聞くことができる場面では、パートナーにも積極的に関わってもらうことで、治療への理解が深まり、精神的な支えにもつながります。また、家事の分担を見直したり、食事の準備や買い物、掃除などを協力して行ったりすることで、治療と仕事を両立しやすくなります。

不妊治療は女性だけの問題ではなく、男性側の検査や通院が必要になることもあります。お互いの仕事の状況や治療のスケジュールを共有し、無理のない範囲で役割分担を話し合っておくことが大切です。

職場に相談し制度の活用や働き方の調整をする

職場に相談し、制度の活用や働き方の調整をすることも、仕事と不妊治療を両立するための大切なポイントです。不妊治療では、通院日が事前に決めにくい場合や、急な受診が必要になる場合もあるため、ひとりで調整しようとすると負担が大きくなることがあります。

実際に2023年の厚生労働省の調査における「仕事と不妊治療の両立ができなかった理由」として最も回答が多かったものは、「待ち時間など通院にかかる時間が読めない、医師から告げられた通院日に外せない仕事が入るなど、仕事の日程調整が難しいため」(49.3%)となっています。

仕事の日程調整をしやすくすることは、不妊治療と仕事を両立させる上では非常に重要な点となってきます。一方で、職場に不妊治療を実施することを伝えることがストレスと感じる人も少なくありません。先述の厚生労働省の調査では、職場に一切伝えていない(伝えない予定)という人が47.1%だったという結果も出ています。

職場に伝える場合でも最初から全てを伝えないという手段もあり、「定期的な通院が必要になる可能性がある」など必要な範囲にとどめて相談することで、業務調整や制度の活用がしやすくなる場合もあります。

職場への報告と伝え方の工夫

職場に報告する際は、伝える相手と情報共有の範囲をあらかじめ決めておくとよいでしょう。不妊治療はプライバシーに関わる機微な問題であるため、直属の上司や人事労務担当者など、伝える相手を事前に特定しておきましょう。

休暇や制度の利用について気後れする必要はありませんが、サポートしてくれる上司や同僚への感謝の気持ちを伝えることも、職場との関係を円滑に保つうえで大切にしたいことです。また、一人で抱え込まず、人事労務担当者や産業保健スタッフなどに相談することで、具体的な手助けが得られたり、心理的な負担が軽くなったりする可能性もあります。

社内制度や不妊治療連絡カードの活用

勤務先の社内制度と「不妊治療連絡カード」を活用することで、職場との調整をスムーズに進めやすくなる可能性があります。企業によっては、不妊治療目的の休暇・休職制度、半日・時間単位の有給休暇、フレックスタイム制、テレワーク、失効年休の積立制度、治療費の補助制度などを導入している場合があります。

まずは就業規則の確認と必要に応じて人事労務担当者への問い合わせをしてみましょう。

また、厚生労働省が公開している「不妊治療連絡カード」は、主治医に治療の実施時期や必要な配慮事項を記入してもらい、企業の人事労務担当者などに正確に伝えるためのツールです。

社内の休暇制度や両立支援制度を利用する際の申請書類として、本カードが活用されるケースもあります。また、口頭では伝えにくい治療の状況や具体的な要望を文書として伝えられるため、プライバシーへの配慮を保ちながら、職場との円滑なコミュニケーションを図ることができます。

仕事を続ける・休職・退職についてそれぞれの判断のポイントは?

不妊治療と仕事の両立が難しいと感じたとき、「仕事を続ける」「休職する」「退職する」といった選択肢があります。どれが正解というものではなく、治療の状況や心身の負担、職場の制度、経済状況などを踏まえて、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

仕事を続ける場合

仕事を続けながら不妊治療を進める場合、収入を維持しながら治療を継続できることが大きなメリットです。治療には保険適用のものもありますが、自己負担分だけでも高額になることもあり、経済的な安定は安心感につながります。

また、仕事を続けることで生活リズムを保ちやすく、不妊治療のことだけを考えすぎずに済むことで、精神的なバランスを保ちやすいと感じる場合もあります。

一方で、急な通院や採卵・移植などで日程調整が必要になることもあるため、職場の理解や、休暇制度・時短勤務・テレワークなどを活用できるかがポイントになります。

休職する場合

心身の負担が大きい場合や、仕事との両立によって治療の継続が難しくなっている場合は、一時的に休職して治療に専念するという方法もあります。通院しやすくなり、体力面・精神面の負担が軽減する可能性があります。

ただし、不妊治療を理由に休職できるかは会社の制度によるため、休職中の給与の有無や復職条件などを事前に確認しておくことが大切です。

退職する場合

退職すると仕事との調整が不要になり、通院や治療を最優先にしやすくなります。頻回の通院が必要な場合や、遠方の医療機関に通っている場合には、負担が軽くなることもあります。

一方で、収入がなくなることによる経済的な不安や、再就職への不安が生じることがあります。当然ですが、仕事をやめたからといって必ず授かれるわけではない点も意識しておく必要があります。また、治療期間は個人差があり、見通しが立ちにくいため、慎重な判断が求められます。

相談しながら判断することが大切

迷ったときは、ひとりで抱え込まず、パートナーや医師、職場の上司・人事担当者などに相談しながら判断することが大切です。治療の見通しや通院頻度がわかると、働き方の調整がしやすくなる場合もあります。

その時点で無理のない選択肢を考え、状況に応じて働き方や治療方針を見直していくようにしましょう。

院長からのメッセージ

不妊治療を始めることで仕事を辞めるしかないのか、という不安を持つ方はとても多いです。実際に「両立できずに退職した」という方が一定数いることも事実ですが、一方で多くの方が工夫しながら治療を続けています。

当院は働く方にも無理なく通っていただくために平日21時まで・週末も診療し、「朝や昼に抜けられない」「週末しか動けない」という方にも対応できるよう診療体制を整えています。スケジュール管理の難しさが受診のハードルにならないよう意識して設計しました。

職場に対して不妊治療の内容すべてを話す必要はありませんが、治療を続けていると、急に通院が必要になったり、採卵のタイミングで数日間の調整が必要になったりすることがあります。ベストの時期に治療をするには避けられない部分もあるため、「定期的に通院する必要がある」ということだけでも早めに伝えておくだけで、調整がかなりしやすくなります。

不妊治療連絡カードは、医師が直接記入して職場に状況を伝えられるツールです。口頭では言いにくいことも、書類として伝えることでプライバシーを守りながら配慮をお願いできます。ご希望の方は遠慮なく申し出てください。

仕事も治療も、どちらか一方を諦める必要はありません。その時々の状況に合わせて、無理のない形を一緒に考えましょう。

参考文献

1)厚生労働省. 「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について

2)厚生労働省. 不妊治療と仕事の両立に関して厚生労働省として初めての調査を実施しました

3)厚生労働省. 不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック ~不妊治療を受ける方と職場で支える上司、同僚の皆さんのために~

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