最終更新日:
2026-01-29

エストラーナテープは、不妊治療のなかでも主に凍結融解胚移植に向けて使用される、貼るタイプのホルモン剤です。女性ホルモン(エストロゲン)を補充することで、子宮内膜を着床に適した状態に整える目的で用いられます。

使用中には、貼った部分の赤みやかゆみ、不正出血、乳房の張りなどの副作用がみられることがあります。また、ホルモンの作用により、むくみを感じる場合もあります。

多くは軽度な症状ですが、まれに血栓症などの重大な副作用が起こることもあるため、下肢の痛みや急な息切れなど、体調の変化には注意が必要です。

本記事では、不妊治療でエストラーナテープが使われる目的や治療スケジュール、正しい使用方法、かぶれを防ぐためのケアや注意点について、順を追って解説します。

不妊治療で使われるエストラーナテープとは?

エストラーナテープは、女性ホルモンであるエストロゲンを皮膚から体内に補う貼り薬です。有効成分のエストラジオールは、もともと体内で分泌されているエストロゲンと同じ成分です。

これまで更年期障害や骨粗しょう症の治療に用いられてきましたが、2022年3月から不妊治療への使用が正式に承認されました。

エストラーナテープは、成分をゆっくりと持続的に放出する仕組みになっており、肌に貼ってから8〜12時間ほどで血中のエストロゲン濃度が緩やかに上昇し、貼り替えまでの48時間、一定の濃度が保たれます。1)

エストラーナテープは皮膚から直接血液中に吸収されるため、肝臓への負担が少なく、血中濃度が安定しやすいという特徴があります。また、飲み薬と比較して中性脂肪への影響が少なく、静脈血栓塞栓症のリスクも低いとされています。

こうした理由から、不妊治療におけるホルモン補充の選択肢として広く用いられています。

不妊治療でエストラーナテープを使用する目的・効果

不妊治療において、エストラーナテープはホルモン環境を整える目的で使用されます。主に凍結融解胚移植に向けて、妊娠の成立・維持に必要な子宮内膜の状態を整えるために用いられます。

エストラーナテープは、女性ホルモンであるエストロゲンを補充する薬剤です。エストロゲンには子宮内膜を厚くし、受精卵が着床しやすい環境をつくる働きがあるため、内膜の発育が不十分な場合や、自然なホルモン分泌に左右されずに内膜を整えたい場合に使用されます。

必要に応じて黄体ホルモン製剤と併用し、妊娠に向けた子宮内膜の準備を段階的に行います。

凍結融解胚移植とは

凍結融解胚移植とは、体外受精(c-IVF)や顕微授精(ICSI)によって凍結保存していた受精卵(胚)を、適切なタイミングで子宮に戻す治療法です。

この治療では、胚を移植する時点で子宮内膜が着床に適した状態になっているかが重要なポイントになります。移植のタイミングは自然な排卵周期に合わせて決める方法もありますが、月経不順がある場合や排卵の確認が難しい場合には、着床しやすい時期を正確に見極めることが難しくなります。

そのため、エストラーナテープなどでホルモンを補充し、子宮内膜の状態をコントロールする方法(ホルモン補充周期)が選択されることがあります。この方法では、自然な排卵のタイミングに左右されず、胚の融解日や移植日を計画的に決められるという特徴があります。

不妊治療でエストラーナテープを使用するスケジュール

凍結融解胚移植では、月経が始まった後からエストラーナテープを貼りはじめ、子宮内膜が十分に厚くなった時点で黄体ホルモン剤の併用もスタートします。

移植の日程は、黄体ホルモン剤を開始した日を排卵日とみなして計算し、胚の融解日と移植日を決定します。

なお、妊娠が確認された後も自己判断で中止せず、妊娠8週まで(最長10週まで)は医師の指示どおり使用を続けます1)

エストラーナテープの使い方

エストラーナテープは、貼る位置が決まっていて、貼り方や剥がし方にいくつかのポイントがあります。肌への負担を減らすために、適切な使用方法を理解しましょう。

貼り方・貼る位置

エストラーナテープは、下腹部または臀部(おしり)に貼ります。胸や背中、ベルトなどが当たりやすい場所、傷や湿疹のある部位は避けましょう。

貼る前に皮膚の水分や汗をしっかり拭き取り、テープを貼ったら手のひら全体でしっかりと押さえつけて貼ります。貼付後は、薬の成分が手に残らないよう、流水で手を洗いましょう。

医師から指示された期間中は、2日ごとに貼り替えます。かぶれを防ぐため、毎回同じ部分に貼るのではなく、貼り替えの際には少しずつ位置をずらして貼ることが大切です。

なお、テープを貼ったまま入浴できますが、上から強く洗ったりこすったりしないよう注意してください。

剥がし方

テープを剥がすときは、皮膚を軽く押さえながら、端からゆっくり剥がします。勢いよく引っ張ると皮膚を傷つけやすいため、無理に剥がさないようにしましょう。

剥がしにくい場合は、ぬるま湯や水で湿らせたタオルをテープにあててから剥がすと、負担を減らしやすくなります。入浴後に貼り替えるようにするのもおすすめです。

使用済みのテープは、粘着面を内側に折りたたんで廃棄してください。

エストラーナテープの主な副作用

エストラーナテープを使用すると、貼った部分の赤みやかゆみなどの皮膚症状がみられることがあります。

多くの場合、テープ剤による刺激やかぶれが原因であり、保湿などのスキンケアが重要となります。症状が強い場合や改善しない場合は、医師に相談してください。

そのほか、次のような症状があらわれることがあります。

  • 不正出血
  • 乳房の張り・痛み
  • 下腹部の痛み
  • 外陰部のかゆみ・おりもの
  • むくみ

エストラーナテープの添付文書によると、皮膚症状や不正出血、乳房の違和感は比較的よくみられる副作用として報告されています2)日常生活に支障が出るほどでなければ経過をみることもありますが、気になる症状がある場合は医師に相談すると安心です。

頻度はまれだが注意が必要な副作用

頻度は高くありませんが、重大な副作用として以下が報告されています。

重大な副作用 初期症状
アナフィラキシー 呼吸困難、むくみ、じんましん
静脈血栓塞栓症・血栓性静脈炎 下肢の痛み・むくみ、胸の痛み、突然の息切れ、急性視力障害

これらはいずれも起こる確率はまれとされていますが、上記のような症状があらわれた場合は、自己判断で様子をみず、すみやかに医師へ連絡してください。

エストラーナテープを使用するうえで知っておきたいポイント

エストラーナテープは2日に1回貼り替えるという少し特殊なスケジュールで使用するため、「貼り替えを忘れてしまった」「かぶれてしまった」と悩む方も少なくありません。

あらかじめ対処法や予防策を知っておくことで、安心して治療を続けやすくなります。

貼り替えを忘れたときの対処法

貼り替えを忘れたことに気づいた時点で、すぐに新しいテープを使用してください。

エストラーナテープは、体内のエストロゲン濃度を安定して保つために、2日に1回のペースで使用することが前提となっています。貼り替えが遅れると、ホルモン量が一時的に低下し、治療効果に影響する可能性があります。

新しいテープを貼ったあとは、その日を起点として2日ごとに貼り替えてください。自己判断でまとめて貼ったり、枚数を増やしたりすることは避け、不安な場合は医師に相談しましょう。

貼り替えを忘れないための工夫

2日に1回という変則的なスケジュールを管理するために、貼り替えを習慣化させる以下のような工夫が役立ちます。

特に専用カレンダーは、貼り替え日がひと目で確認できるため、うっかり忘れ防止に役立ちます。

かぶれを防ぐためのセルフケア

エストラーナテープによるかぶれを防ぐためには、皮膚のバリア機能を守ることが重要です。

かぶれ対策として、以下のポイントを意識してみてください3)

ポイント 具体的な方法
同じ場所に続けて貼らない 貼るたびに場所を変え、皮膚への負担を抑える
端からゆっくり剥がす 勢いよく剥がすと角質層まで剥がれてしまうため、優しく取り除く
保湿剤でスキンケアをする ・貼る前日の夜に保湿剤を塗る
・テープを貼っている部位は避けて周辺を保湿
・乾燥が気になる場合は朝や日中も保湿

かぶれたときの対処法

かぶれが生じた場合は、ワセリンを薄く塗り、様子をみましょう。かぶれが治るまで、その部位にはテープを貼らないでください。

市販のステロイド外用剤なども有効ですが、数日たっても症状が改善しない場合や悪化する場合は、早めに医師に相談しましょう。

不妊治療におけるエストラーナテープに関してよくある質問

不妊治療でエストラーナテープを使用する際に、よく寄せられる質問について解説します。

エストラーナテープを貼る枚数は決まっていますか?

エストラーナテープを貼る枚数は、一人ひとりの状態に合わせて医師が調整します。

エストラーナテープには複数の規格があり、治療の目的や子宮内膜の厚さ、血中ホルモン値などを確認しながら、必要な量が判断されます。そのため、貼る枚数は人によって異なります。凍結融解胚移植のホルモン補充周期では、一定の範囲内で処方されることが多く、治療経過に応じて量が変更される場合もあります。

自己判断で枚数を増減すると、ホルモンバランスに影響する可能性があるため、必ず医師の指示どおり使用しましょう。

エストラーナテープは貼る場所によって効果は変わりますか?

下腹部またはおしりに貼る場合、効果に大きな差はないとされています。どちらの部位でも、体内に吸収される成分量や皮膚への刺激に大きな違いはないと報告されています。

一方で、背中など指定されていない部位に貼ると、薬の吸収が予測と異なる可能性があります。添付文書で推奨されている部位以外では、効果や安全性が十分に確認されていないため、決められた部位以外には貼らないようにしましょう。

エストラーナテープの副作用で太ることはありますか?

エストラーナテープの副作用として、体重が増えたと感じる方はいますが、脂肪が直接増えることが原因とされるケースは多くありません。エストロゲンには体内に水分やナトリウムを貯め込む作用があり、むくみの影響で体重が増えたように感じる場合があります。

多くの場合は一時的な変化で、過度に心配する必要はありません。ただし、急激な体重増加や強いむくみが続く場合は、念のため医師に相談すると安心です。

院長からのメッセージ

「貼り薬」と聞くと、普段飲み薬に慣れている方にとっては少し不安に感じるかもしれません。普段は湿布薬くらいしか貼り薬を使う機会はないものですよね。2日に1回の貼り替えというスケジュールも、最初は戸惑うことがあるでしょう。

エストラーナテープは、子宮内膜を着床に適した状態に整えるために、体内のエストロゲン濃度を安定して保つことが大切です。そのため、2日に1回のペースで確実に貼り替えることが重要になります。

貼り替えを忘れないためには、スマートフォンのリマインダー機能や、メーカーが提供している専用カレンダーを活用すると便利です。また、かぶれ対策としては、毎回貼る位置を少しずらすこと、そして貼っていない部分を含めて下腹部やおしり全体を保湿することが効果的です。

エストラーナテープは経口薬と比較して肝臓への負担が少なく、血中濃度が安定しやすいという医学的な利点があります。貼り薬という慣れない方法ですが、これらの理由から不妊治療で広く選ばれています。

治療中に気になることがあれば、些細なことでも遠慮なく医療機関に相談してください。貼り忘れてしまった場合の対処法や、かぶれが続く場合の対応など、状況に応じたアドバイスを受けることができます。

参考文献

1)久光製薬株式会社.エストラーナテープ インタビューフォーム. 

2)医薬品医療機器情報提供ホームページエストラーナテープ.

3)久光製薬株式会社エストラーナテープをご使用の方へ

久光製薬株式会社. エストラーナテープ おくすりカレンダー. 

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