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最終更新日:
2026-05-13

妊活中にお酒を飲んでもよいのか、いつからやめるべきなのかと迷う方は少なくありません。妊活中の飲酒は必ずしも完全にやめる必要はないとされていますが、アルコール摂取量が増えると妊娠率が下がる傾向は男女ともに報告されており、習慣的に多量のアルコールを飲んでいる方は、飲み方を見直すのが望ましいといえます。

この記事では、妊活中の飲酒が女性・男性それぞれに与える影響や、お酒を控えるのに適したタイミング、無理なくお酒を減らすための工夫についてわかりやすく解説します。

妊活中はお酒をやめるべき?飲酒が与える影響

妊活中のお酒は、必ずしも完全にやめなければならないわけではありません。しかし、アルコール摂取量が増加すると、妊娠率が低下する可能性を示した研究結果があります。

アメリカ生殖医学会では、1日2杯以上の飲酒(日本の基準では純アルコール20g以上に相当)は、妊娠を目指す女性において控えることが望ましいとしています。しかし一方で、アルコール摂取のすべてが不妊の直接的な原因となるという根拠はないとされています1)

「妊活中は絶対に飲酒をやめなければならない」と言える根拠はありませんが、飲酒の習慣がある場合は量を減らす、頻度を控える、できれば禁酒するという形で、飲み方を見直すのが望ましいといえるでしょう。

女性側の妊娠前のお酒の影響|なぜアルコールを控えるべき?

お酒が女性の妊活に与える影響については、いくつかの研究結果がありすべての見解が一致している訳ではありません。適量であれば必ずしも不妊に直結する悪影響はないという結果もあります。しかし、アルコール摂取量が増えると妊娠率が下がるという傾向は多くの研究で共通しているため、大量の飲酒はさけることが推奨されます1)

お酒を飲むことで妊娠率が下がるメカニズムは明確になっていない部分もありますが、以下のようなものが考えられています2)

排卵障害、ホルモンバランスの乱れ

アルコールは体内のホルモンの濃度を低下させ、排卵を抑制する可能性があります。排卵が抑制されると妊娠の機会が減ることになります。

月経周期の異常

習慣的に多量の飲酒をする女性では、無月経や月経不順、月経困難症(強い月経痛)といった月経障害の発生率が高いことが報告されています。月経周期の乱れは排卵のタイミングを不安定にし、妊娠の機会を減らす要因となります。

卵管での精子輸送の妨げ

アルコールが卵管を通る精子の動きを妨げる可能性も指摘されています。精子が卵子にたどり着きにくくなることで、受精のチャンスが減るおそれがあります。

女性は妊娠後には完全にアルコールを避けるべき

女性側は、妊娠後のことも見据えて事前に飲酒について考えておくと安心です。妊娠中の飲酒は、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるため、妊娠がわかったら禁酒が基本とされています。

妊娠中に飲酒をすると、アルコール成分が胎盤を通過し赤ちゃんにも影響します。低体重などの発育の遅れ、中枢神経系の障害、特徴的な顔つきとなる胎児性アルコール症候群(FAS)や、胎児性アルコール症候群とは診断されなくても、アルコールの影響で何かしらの症状が出る胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)などのリスクが生じます。

妊活中は妊娠にすぐ気づけるとは限りません。妊娠に気づかないまま飲酒を続けてしまったと不安を感じる方もいます。妊娠初期のごく早い時期の飲酒が、直ちに影響するとは限りませんが、妊娠の可能性がある期間から飲酒を控えておくことで、こうした不安を減らしやすくなります。

そのため、妊活を始めたら「いつ妊娠してもおかしくない」という前提で、できるだけアルコールを控える、もしくはやめておくとより安心です。

男性側のお酒の影響|男性もアルコールを控えるべき?

男性の飲酒も妊娠のしやすさに影響を与える可能性があります。男性側も適量の飲酒であれば、必ずしも妊娠への明確な悪影響は確認されていませんが、大量の飲酒をする男性がパートナーの場合、妊娠までの期間が長くなる結果が報告されています1)

男性の飲酒が妊娠に影響するメカニズムも完全には明らかになっていません。しかし、一定量の飲酒を継続している男性では、精子濃度・総精子数・正常な形態をした精子の割合が低下することが報告されています3)

女性側と同様に、男性も「絶対に禁酒しなければならない」わけではありません。ただし、習慣的に多めの飲酒をしている場合は、妊活を機に量や頻度を見直すことを検討してみましょう。

妊活でお酒はいつからやめる?控えるのに適したタイミングは?

実際にお酒をやめたり控えたりするタイミングは、妊活の開始時点が望ましいといえます。アルコールが体に与える影響は慢性的なものもあり、飲酒をやめた瞬間に影響がなくなるわけではありません。

ただし、女性に関しては生理周期の中で飲酒の影響の大きさが変わる可能性があります。男女別にタイミングについて細かく解説します。

女性は生理中や排卵日など生理周期によって影響が異なる?

女性の場合、生理周期の中でも排卵日の前後数日や黄体期(排卵後から次の生理開始までの期間)において、飲酒の影響が大きい可能性が海外の研究で報告されています。この研究では、生理開始から排卵直前までの期間よりも、排卵期や黄体期の飲酒をすると、妊娠率の低下が大きかったという結果になっています4)

生理周期の時期別にお酒の影響を調べた研究は多くないため、この結果だけで全ては判断できません。しかし現在得られている調査結果からは、お酒を控える場合は特に排卵日の前後や排卵後は意識したい期間といえます。

男性はいつからやめるべき?精子への影響を考えるタイミング

男性についても、女性と同様に「妊活を始めたタイミング」が、飲酒習慣を見直すひとつの目安となります。男性の場合に意識しておきたいのが、精子がつくられるまでに必要な期間です。

精子は精巣で約74日かけてつくられます。そのため、飲酒習慣を見直したとしても、その影響が精液の状態に反映されるまでには一定の時間が必要です。逆にいえば、妊活を意識し始めたタイミングで早めに飲酒の量や頻度を見直すことで、数か月先の精子の状態に良い影響を与えられる可能性があります。

「絶対に禁酒しなければならない」と気負う必要はありませんが、習慣的に多めの飲酒をしている場合は、できるだけ早い段階から量や頻度を控えめにしていくのが望ましいといえるでしょう。

妊活中にお酒をやめられない場合はどうする?

妊活だからお酒をやめたいと思っても、急にやめるのが難しいと思う人もいるかと思います。仕事などでお酒の誘いがある場合や、もともとお酒が大好きな人は急に習慣を変えるのが難しいかもしれません。

ここでは厚生労働省が作成している「習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方」という資料5)の記載から、お酒の誘いの断り方や、お酒が大好きな人が無理なく減らす方法の例を紹介します。

お酒の誘いの断り方の例

お酒を減らすための対処方法として以下が例として挙げられています。

・周囲に減酒していることを宣言する
・飲み会などでお酒を注がれないようグラスにソフトドリンクなどを入れておく
・オンライン飲み会ではあらかじめ終了時間を決めておく
・仕事のあと同僚と飲酒する日数を制限する
・友人から飲みに誘われたら、ランチを提案してみる

いずれも直接断る方法ではないため、比較的実践しやすい内容となっています。まずは自分で取り入れやすい部分から始めてみるのもよいでしょう。

お酒が大好きな人が無理なく減らす方法

お酒が大好きな人は、いきなり禁酒せずに徐々に減らす方法も選択肢となります。

お酒を飲みたくなったときや実際に飲むときに、試したいこととして以下が挙げられています。

<お酒が飲みたくなったとき>
・飲酒しないで、家に帰る
・飲酒以外のストレス解消法をみつける
・運動など、他の活動をみつける
・趣味をもつ
・家族に心配事を話す
・お酒を飲まなくても話ができる相手をみつける

<お酒を飲むとき>
・バランスのよい食事と一緒に摂取する
・飲酒の合間に、水または炭酸水、ノンアルコール飲料を飲む
・水などを混ぜてアルコール濃度を低くする
・少しずつ飲む

なお、お酒に関して自分だけで対処が難しいと感じる場合は、家族に協力を仰いだり、場合によっては医療機関の受診や自治体の相談拠点を利用する選択肢もあります。

例として、東京都では東京都立精神保健福祉センターがアルコールを含めた相談拠点となっています。必要と感じる場合は相談だけでもしてみてもよいでしょう。

関連サイト:東京都福祉局 東京都立精神保健福祉センター

妊活とお酒に関するよくある質問

妊活やお酒について、よく寄せられる質問に回答します。

ノンアルコール飲料なら飲んでもよい?

アルコール分0.00%と表示された商品であれば、妊活中・妊娠中に飲んでも心配ないでしょう。

ただし、日本の規制上はアルコール分1%未満であれば「ノンアルコール」として販売できるため、ノンアルコールという表記であってもアルコールを含んでいる商品は多数あります。アルコールを摂取したくない場合は必ずラベルで「0.00%」であることを確認することが大切です。

ノンアルコール表記の飲料以外にも、炭酸水・お茶・ジュースなども上手に活用することで、飲酒の満足感を保ちながらアルコール摂取を控えやすくなります。

妊娠に気づかずお酒を飲んでしまったけど大丈夫?

妊娠に気づかずに飲酒してしまった場合でも、すぐに赤ちゃんに悪影響があるとは限らず、過度に心配する必要はないでしょう。

ただし、「この量なら安全」という明確な基準は存在しないため、妊娠が判明した時点から飲酒を控えることが大切です。

妊娠中に飲酒をやめるのに遅すぎるということはなく、やめることで赤ちゃんへのリスクを減らすことにつながります。飲酒した時期や量、頻度が気になる場合は、一人で抱え込まず医師に相談するようにしましょう。

院長からのメッセージ

「妊活中はお酒を完全にやめなければいけませんか?」という質問は診察室でもよく受けます。結論からお伝えすると、「絶対にやめなければ妊娠できない」わけではありませんが、「量が増えるほど妊娠率が下がる傾向がある」というのが現在の研究から見えてきていることです。まずはここを出発点として考えてみてください。

ただ、妊活中と妊娠中では話が変わります。妊娠中の飲酒は赤ちゃんに影響する可能性があり、妊娠がわかった時点での禁酒は必須です。問題は、妊活中は「妊娠に気づく前」の期間がどうしても生じることです。妊娠初期の数週間は自覚症状がなく、気づかないまま飲酒が続いてしまうことがあります。その後になって「あのとき飲んでいた」と不安を抱える方を何人も見てきました。妊活を始めたら「いつ妊娠してもおかしくない状態である」という前提で飲酒を考えるのが、結果的に一番安心です。

男性も同じです。精子は形成に約74日かかるため、今の飲酒習慣は数か月後の精子の状態に反映されます。パートナーと一緒に飲み方を見直す機会にしてください。

「お酒が好きだからいきなりやめられない」という方には、いきなり完全な禁酒を最初の目標にしなくてよいとお伝えしています。量を減らす、頻度を下げる、ノンアルコール飲料を活用するといった小さな変化から始めるだけでも意味があります。無理のない範囲から、少しずつ整えていきましょう。

参考文献

1)ASRM「Optimizing natural fertility: a committee opinion (2022)」

2)Jensen TK, et al. Does moderate alcohol consumption affect fertility? Follow up study among couples planning first pregnancy. BMJ 1998;317:505–10.

3)Jensen TK, et al. Habitual alcohol consumption associated with reduced semen quality and changes in reproductive hormones; a cross-sectional study among 1221 young Danish men. BMJ Open 2014;4:e005462.

4)Anwar MY, Marcus M, Taylor KC. The association between alcohol intake and fecundability during menstrual cycle phases. Hum Reprod. 2021;36(9):2538-2548.

5)厚生労働省. 習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方

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